社会保険料を遮二無二抑えることは②

前回のエントリーでは、
 自然とは言えない形の法人役員となって社会保険料を抑える向きがあること、
 そして、それを指南するビジネスがあること、
 さらに、厚労省が基準の明確化を検討していること
について触れました。

社会保険料の支払いは、働く人にとって確かに負担です。
企業にとっても、年金機構等に毎月納める額は相当なものです。

それを低く抑えられれば、負担が軽減されるというメリットがあります。
一方、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。以下にいくつか挙げてみました。

保険料をいたずらに低く抑えてしまう際のデメリット

その1 将来の年金受給額の減少

 役員報酬を最低額に設定すると、厚生年金の「報酬比例部分」が最低レベルで固定され、本来の稼ぎに見合った年金を受け取れなくなる。
例)報酬を月5万円に設定。国民年金のみよりは僅かに増えるが、本来の収入で厚生年金に加入した場合と比べ、生涯で数百万円の受給額の差が生じるおそれ。

その2 社会保険給付(休業補償)の低下

 標準報酬月額が低いため、傷病手当金や出産手当金の給付額が最小限になる。万一の病気や出産時に十分な生活保障が得られない。
例)病気で長期間働けなくなった場合、傷病手当金が日額数千円しか出ず、生活費がショートしてしまう。

その3 法人維持コストの負担

 設立費用(登記等)に加え、年間維持費(税理士報酬、法人住民税の均等割約7万円、社会保険料(最低額ではある)など)が積み重なり、節約額を上回ってしまう。
例)売上ゼロのダミー法人でも年間維持コストが数十万円発生する。設立後1〜2年で解散手続きをすればさらに数万円の追加費用が発生する。

その4 実態なし(ペーパー)判定のリスク

 売上ゼロや極端に少ない法人を「社会保険加入逃れのためのペーパーカンパニー」と年金事務所が判断し、加入を取り消す。
例)監視強化により、実態がないとみなされ健康保険・厚生年金の加入が取消しになるおそれ。過去に遡って高額な国民健康保険料(数百万円)を一括請求される可能性もゼロではない。

その5 制度改正・監視強化のリスク

 厚労省や年金事務所が「不自然な社会保険加入」への監視を強化し、スキーム自体が突然使えなくなるリスクが常につきまとう。
例)過去に一般社団法人を使った節税スキームが封じられたように、実態のないマイクロ法人への規制(最低報酬基準の導入など)がいつ行われてもおかしくない。

その6 死亡時・遺族への影響

 役員報酬が低いと、万が一の死亡時に遺族に支払われる「遺族厚生年金」の額も低レベルで計算されることになる。
例)遺族厚生年金は生前の報酬比例で計算されるため、若くして経営者が亡くなった場合、残された配偶者や子供の生活費・教育資金が完全に不足する事態に陥るおそれあり。

その7 個人・法人の信用力低下

 個人の給与額面が極端に低くなるため、住宅ローンやクレジットカードの審査に落ちる可能性あり。法人としても融資が受けづらくなる。
例)会社に利益が残っていても、社長個人の源泉徴収票が「年収60万円」等になるため、住宅ローンが否決される。実態の薄い法人は銀行融資の審査でも不利になる可能性大でしょう。

・・・と、いろいろと思いつきます。

目先のキャッシュアウトを減らす代償として、多くの爆弾を抱え込むように見えます。
当事務所では、このようなリスクをわかりやすくご説明し、社会保険制度の大切さをわかっていただくことが大切であると考えています。

もちろんそのうえで、社会保険料を抑える方策について指南させていただきます。