今後の障害者雇用制度の在り方(報告書②)
今回は、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」の中から、二つ挙げられていた検討課題のうちの一つである「Ⅱ 障害者雇用の「質」について」の内容の前半部分を把握したいと思います。
前回の制度改正(令和4(2022)年)では、事業主の責務規定として、障害者の雇用について「職業能力の開発及び向上」に関する措置を行うことが加えられました。
障害者の雇用の促進等に関する法律
(事業主の責務)
第五条 全て事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。
一方で、障害者を戦力として使うことや、社内の中心的な業務へ従事させることなどが十分に重視されていない傾向があることが、いまだ課題とされています。
その他、能力を十分に発揮してもらうためのノウハウ不足や、サポート人材の育成に関しても多くの企業から課題として挙げられている状況です。
研究会においては、事務局(厚労省)により提示された以下の論点に基づき議論が行われました。
・ 障害者雇用の「質」として特に重視されるべき要素として、以下が特に中心的な要素と考えられる。
1)能力発揮の十分な促進(①職務の選定・創出と障害特性等との適切なマッチング、②成長を促す OJT や教育訓練機会の確保等)
2)能力発揮の成果の事業活動への十分な活用
3)適正な雇用管理(①採用・配置・育成等の計画的な実施、②障害特性に配慮した働きやすさを高める措置等)
4)発揮した能力に対する正当な評価とその反映(①評価結果に相応しい配置(職務内容)、②処遇(昇進・昇格))
5)雇用の安定(安定的な雇用契約期間等)・ こうした「質」として重視すべき中心的な要素については、法令において明示する。
(研究会報告書(令和8年2月)より。下線はブログ主)
質の向上に向けて、前回の改正に加えてさらに法令に規定する方針となっています。
この論点提示を受けて、研究会では次のような意見・懸念があったと紹介されています
〇「質」の要素を法令で明確に規定する方向性の検討
障害特性への配慮や働きやすい環境整備など、重視すべき「質」の要素をガイドライン等で示し、法令上に根拠を置くことが有効。その際には、現場の実態を踏まえ、適用時期は慎重に検討すべきとの指摘もあり。
〇相談・支援体制の強化の必要性
障害特性に配慮した働きやすさを実現するためには、直属の上司以外への相談支援体制や、労働者や職場(事業主)へのサポート体制が不可欠である。
〇実態把握のための報告項目の追加
障害者雇用状況報告(6.1報告)において、「質」に関する一定の項目を追加し、実態を把握することが有効ではないか。
〇慎重な検討を求める慎重論
具体的内容を丁寧に議論する必要があり、特に中小企業では可能な取組に限界があるため、実態に即した柔軟な検討が必要。
法令上の明示は高いハードルを示すこととなり、障害者雇用をこれから進めようとする事業主を委縮させるおそれがあるため、慎重に検討すべき。
〇外部支援機能の拡充
中小企業にとって法定雇用率達成と質の向上を同時に実現するのはハードルが高い。
採用後の定着段階の外部からの支援機能の拡充が必要であり、認定事業者がノウハウ不足の事業主に対し雇用管理に関する相談援助を行う「障害者雇用相談援助事業」の効果的な運用を含め、検討すべき。
研究会では、これらの多様な意見を十分に踏まえつつ、今後さらに検討を深めていくことが確認されています。
以上、報告書の「質の向上」に係る前半部分を見てきました。
雇用率がどんどん上がる一方で、質の向上までも強い義務が課されるとなれば、特にノウハウに乏しい企業にとってはたまったものではありません。
逆にモラルハザード(どうせ守れないのだから違法状態上等!と考えてしまう)につながる懸念さえ生じるでしょう。
事業主や職場に対する手厚い支援とセットでないと、現実味の伴わない制度になってしまいます。
報告書にあったとおり、各方面からの意見を十分に踏まえて検討が深められることを期待いたします。


