今後の障害者雇用制度の在り方(報告書⑤)

厚労省発表の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」から、今回は、「Ⅲ 障害者雇用率制度等の在り方について」のうち「1.手帳を所持していない難病患者の位置付け」を取り上げます。

障害者雇用促進法における「障害者」と、雇用義務の対象としての「障害者」は範囲が異なっています。

障害者雇用促進法での「障害者」:身体、知的、精神の各障害に加え、「その他の心身の機能の障害」があるため長期間にわたり職業生活に相当の制限を受ける者、又は職業生活を営むことが著しく困難な者(難病患者も対象

雇用義務の対象としての「障害者」:身体、知的、精神の各障害者で、原則、手帳所持者に限る

この違いがあり、手帳を所持しない難病患者は、雇用義務の対象でないため、取扱いについて検討することとされていました。

手帳を所持しない難病患者であっても、就労困難性を有する方が多い傾向があることなどの現状を踏まえ、厚労省は研究会に以下の論点提示を行います。

・ 手帳が得られていない難病患者については、本人からの申請により(略)、個別の就労困難性(略)を判定し、一定水準にある場合、まずは、実雇用率において一定の算定を可能とする。その上で、施行状況を注意深く見ながら更に雇用義務の在り方を検討していく。
・ 個別の就労困難性の判定基準の検討は(略)、更なる調査研究や専門家の知見を交えた検討等を経て、対象範囲の明確さや、公正性、一律性が確保できるような内容としていく。(略)
・ また、まず現に困難に直面している者を優先的に判断する等の円滑・着実な施行体制の検討が併せて必要
・ 実雇用率における算定は、他の障害種別への影響が生じないようにする観点からの方策を併せて検討する。

(研究会報告書(令和8年2月)より。下線はブログ主。一部略)

合わせて、事務局から粗いイメージとして、個別判定を行う際の基本的考え方が研究会にて示されます(細かいので省略します)。

これらを受けて、研究会では次のような意見が出されます。

  • この論点は検討事項として10年以上にわたり引き続いており、具体的な制度設計に入る時期に来ている。この方向性で検討を深めるべき
  • 個別判定の際は、アセスメントが重要。医療的な背景は医師による客観的裏付けが必要。審査委員会による合議で判定することが重要
  • 難病患者は個別性が高いなど、個別判定を行う難易度が高いと想定される。(事務局が示した)実雇用率の算定対象者数も試算によって開きがある。よって、個別判定制度を設ける是非の判断が直ちにできず、引き続き慎重な検討が必要

最後の意見にあったように、想定される対象者数に大きな開きがあります。厚労省の試算では、約2,800人から約65,000人と、条件設定により全然違った数が出てきています。

もし個別にアセスメントすることになれば、相当の専門性が必要となり、その体制が確保できるのかについても大きな問題となりえます。地域によって取扱いの差が生じてもなりませんし、判定者によってばらつきが生じてもいけません。

雇用率の算定に載せていくとしても各課題を解消しなければならず、一朝一夕にいかない気がします。
上がり続ける雇用率を達成する難易度が下がることは期待できますが。

今後の審議会(障害者雇用分科会)の議論をフォローしていきたいと思います。