今後の障害者雇用制度の在り方(報告書➉)

厚労省発表の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」をこれまで長々と眺めてきました。
今回で最終回となります。

さっそく、「Ⅲ 障害者雇用率制度等の在り方について」のうち「6.障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者数が 100 人以下の事業主へ拡大すること」を見ていきましょう。

納付金制度が創設された昭和51年ころは、中小企業の方が雇用率の達成が進んでいました。このことから、納付金対象企業は常用労働者300人超の事業主に限定されていました。
その後、平成19年の審議会の意見書により、本来中小企業も障害者雇用率の適用対象であり、障害者雇用が進んでいる企業とそうでない企業との間に経済的不均衡がある、とされたことから、100人超の事業主まで対象が拡大されて、今に至ります。

現状としては、100人未満の未達成企業のうち、障害者を一人も雇っていない企業の割合が約9割となっており、障害者雇用が比較的停滞している状況です。

これを踏まえ、事務局(厚労省)から以下の論点提示がなされました。

・ 常用労働者数 100 人以下の企業は、達成企業の割合が半数を下回り、かつ長期的に見ると改善傾向が乏しいことから、障害者雇用の更なる促進が求められる。中小企業の障害者雇用を支援する施策の拡充・強化も踏まえ、この状況の改善や企業間の公平性の確保の観点から、100 人以下の企業についても納付金の納付義務の対象とすることについてどう考えるか。

(研究会報告書(令和8年2月)より。下線はブログ主)

研究会では、様々な意見がみられました。
100人以下の事業主への納付金義務の適用拡大を検討すべきとの意見や、中小企業の障害者雇用ゼロからの第一歩を後押しするため、納付義務で意識を高め、雇用を促進すべきだという意見。また、適用は周知・準備期間を十分に設け段階的に進めるべきであるとか、その間は業務切出しや定着支援を重点的に行うことが重要であるとの意見が出されました。
また、事務体制の整備も併せて検討が必要であると。対象企業が莫大に増えるでしょうから、納付金を徴収する体制も相応のものが求められるということでしょう。

一方、最近の最低賃金大幅引き上げなどで中小企業の経営は厳しく、受入れ体制が整わないまま無理に雇用すると双方に悪影響を及ぼす恐れがあること。まずは相談援助事業等の支援を充実させ、中小企業の雇用実績を確認した上で適用拡大を再検討すべきとの慎重論も見られます。準備期間の必要性や、事業協同組合算定特例の見直しも指摘されています。

これらの意見を踏まえ、今後は社会連帯の理念に基づき、特に最初の1人の負荷が大きい点を踏まえ、雇用ゼロ企業へのきめ細かな支援と定着支援を強化する具体方法を検討すべきとされています。

納付金対象企業の拡大は、社会的影響が非常に大きいものと思われます。
雇用率がどんどん上昇していけば、1人以上の雇用義務が発生する企業も拡大していきますので、納付金対象企業の規模も拡大させていくのが自然ではあります。
ただし、中小企業特有の課題がありますので、それらとの折り合いをどのようにつけるのか、難しい問題だと思います。