50人未満の事業場にも義務化されるストレスチェック制度④(社長・人事部長は実施事務に従事できない)
前回のエントリーでは、施行までに準備すべきことをご紹介しました。
三回にわたって眺めてきましたが、今回で最終回です。
実施の段階での留意点を、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(pdf)から見ていきます。
個人の結果は本人に直接通知される
個人のストレスチェック結果は健康情報であり、個人情報保護法第2条第3項(定義)に規定する「要配慮個人情報」に当たります。
実施者から本人に直接通知されるもので、事業者が提供を受けるには本人の事前の同意が必要です。
一方、面接指導の申出の有無、面接指導結果、その結果について医師から聴取した意見の三つは、
法令に基づく事項ですので、同意なく取得できます。
通知の方法にも配慮が必要です。
面接指導の対象者だけに職場で封書を配ると、対象者であることを他の従業員に類推される可能性があります。
電子メールで通知する、全員への結果通知に対象者である旨の通知文を同封するなどの配慮が必要です。
不利益な取扱いの禁止
事業者は、把握した健康情報等に基づき、健康の確保に必要な範囲を超える不利益な取扱いを行ってはなりません。
禁止されるのは次の四つです。
- 労働者が面接指導の申出をしたことを理由とするもの(法律により禁止)
- ストレスチェック結果のみを理由とするもの(法律により禁止)
- ストレスチェックを受けないこと等を理由とするもの(指針により禁止)
- 面接指導結果を理由とするもの(指針により禁止)
労働者に受検義務はありませんので、就業規則で受検を義務付けて懲戒処分を行うことは、
法の趣旨に照らして認められないと例示されています。
自社で実施する場合の制限
ストレスチェックは、外部機関に委託せず自社で実施することもできます。
その場合は、実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を自社内で選定します。
ただし、人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者、つまり社長や人事部長等は、
ストレスチェックの実施の事務に従事できません。
他方、外部に委託する場合は、事業場内に置く実務担当者は個人の結果等の健康情報を取り扱わない立場ですので、
監督的地位にある者を指名することもできます。
自社実施では、その前提が崩れるわけです。
実施者と実施事務従事者には守秘義務が課され、違反した場合の罰則もあります。
努力義務とされる集団分析にも制限があります。
外部機関に委託すれば10人未満を非表示とする等の措置が自動的に講じられますが、自社で行う場合は個人を特定できない方法の厳守が必要です。
労働者数10人未満の事業場や10人未満の集団単位では、集団分析を原則として実施しないこととされます。
この10人は在籍労働者数ではなく実際の受検者数で数えます。
小規模事業場では社内の人間関係が近く、個人が特定されるリスクも、社内で管理していること自体への不安も生じやすいとされています。
これまで何度も申し上げましたが、施行は2028(令和10)年4月1日です。
外部に委託するか自社で実施するかは、体制と費用の比較にとどまらず、
従業員に安心して受けてもらえるかどうかの判断でもあるのだろうと思います。


