特定技能の上限接近は、外食業だけの話ではありません
前回のエントリーで、外食業分野の特定技能1号が新規受付停止に至った経緯をご紹介しました。
では、この動きは外食業だけの特殊事情なのでしょうか。
残念ながら、そうとも言い切れないのが実情です。
特定技能1号の受入れ見込数は、2024(令和6)年3月に政府が再設定し、
2024〜2028年度の5年間で全体約82万人という枠組みに拡大されました。
分野別に見ると、工業製品製造業が17万3,300人、飲食料品製造業が13万9,000人、介護が13万5,000人といった具合に、大きな枠が設定されています。
枠が拡大された一方で、在留者数の伸びも加速しています。
出入国在留管理庁の公表資料では、特定技能1号の在留者数は
2025(令和7)年12月末時点で約38万人に達しており、その後も月を追って積み上がっている状況です。
分野ごとに消化ペースには差があり、受入れ枠に対する充足率が高い順に
外食業、飲食料品製造業、建設、介護の産業分野が並ぶ形となっています。
各分野の事情は、それぞれに根深いものがあります。
【飲食料品製造業】
地方立地の工場が多く、国内人材の確保が年々難しくなっている。技能実習からの切替えに加え、新規入国者の増加も続いており、外食業に次いで枠の充足が進みやすい構造。
【建設分野】
高齢化と若年入職者の減少が重なっており、2024年問題以降、技能実習から特定技能への移行を前提に人材計画を組み立ててきた事業者が少なくない。この分野については受入れ事業者ごとに「常勤職員数まで」という企業単位の上限も設けられており、業界全体の枠と企業単位の枠、二重の制約がかかる分野である。
【介護分野】
2040年に向けて必要人材が加速度的に増えることが見込まれている。この分野も事業所ごとに常勤介護職員数までという企業単位の上限あり。
これらの分野で外食業と同様に新規受付が停止されれば、影響は一業界の問題にとどまりません。
特に中小事業者にとっては、採用計画どころか事業計画そのものの再設計を迫られる局面になり得ます。
ここで押さえておきたいのは、枠が埋まる速度には二つの背景がある、ということです。
一つは、当該分野の人手不足の深刻さをそのまま反映しているという背景。
もう一つは、送出国側の供給や国内での在留資格変更(特に留学生からの切替え)が、
想定より早く進んでいるという背景。
前者は産業構造の問題、後者は制度運用の問題であり、
両者が重なった分野から順に上限に近づいていく構図になっているものと思われます。
外国人材の活用を前提に事業運営をされている事業主様におかれましては、
自社が属する分野の受入れ状況を定期的に確認する習慣を持ちたいところです。
受入枠の充足状況によっては、採用の可否や時期が大きく左右される時代に入ったといえるでしょう。
(外国人材に限らず、人材戦略を複線化しておくことの重要性も、あらためて浮かび上がってきます。)
(出典)
・出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
・政府「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加」(2024(令和6)年3月閣議決定)
・国土交通省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-建設分野の基準について」(pdf)
・厚生労働省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について」(pdf)


