法定雇用率の算定方法の見直し➀
2026(令和8)年8月31日に開催された労働政策審議会障害者雇用分科会で、法定雇用率の算定方法そのものを見直す議論が始まったことがわかりました。
労働政策審議会 障害者雇用分科会(第141回)資料2「法定雇用率の算定に係る考え方について」(2026(令和8)年8月31日)
次期改定に向けた検討の方向性として、事務局から二つの考え方が示されています。
二回に分けて、資料の中身と実務への影響を見ていきます。
算定式のどこに手を入れるのか
法定雇用率は、分子を「対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数」、分母を「常用労働者数+失業者数」とする式で算定されます。
このうち分子の「失業している対象障害者」には、ハローワークの有効求職者数が基礎として用いられています。
障害者の有効求職者には一律の有効期間の設定がなく、概ね6か月以上利用がない場合に求職意思を確認する扱いになっています(一般は求職申し込みから翌々月の月末までが有効求職者)。
この中には求職登録の後に求職活動を実質的に行っていない者も含まれる、というのが資料の挙げる課題です。
私がHWで働いていたのは大昔になりますが、有効求職者で連絡が取れない方がいて、担当者が苦労していたことを覚えています。
示された方向性は、次の二つです。
① 有効求職者のうち、一定期間(例えば3か月、6か月又は1年)内に現に求職活動を行っている者を「労働の意思」を有する者として計上する
② 現行は15歳〜64歳のデータを用いているところを、全年齢のデータで算定する
二つの考えの意味するところ
これを見て引き下げもありうると判断するのは早計かもしれません。
二つの案が同じ方向に効くわけではないからです。
①は分子だけを縮めますので、明確に下方への圧力となります。
資料には、概ね分子100万人のうち失業者である精神障害者は13万人とあり、失業者部分が分子に占める比重はそれなりです。
「有効」の範囲を3か月とするか1年とするかで結果が変わりますから、このしきい値の置き方が争点になるものと思われます。
他方、②は分子と分母の両方を増やしますので、方向は定まりません。
分岐点は、65歳以上の労働者に占める対象障害者の割合が現行の2.7%より高いか低いか、これだけです。
加齢に伴う中途障害で手帳を取得しつつ継続雇用されている層を考えると、決して低くはないかもしれません。一方で65歳以上の就業者は健康度の高い層に偏りますので、現行の率と拮抗する水準に落ち着く可能性が高いように思われます。
事務局は法文上「労働者」に年齢の上限はないという理屈の整理を優先させた印象を受けます(非公表の試算を根拠にしている可能性も否定できませんが)。
今後の障害者の法定雇用率は、引き下げまでとはいかないものの、引き上げペースの鈍化や据置きの可能性は出てきた、というあたりが現時点で言えることだと考えます。


