労働安全衛生調査より①(安全衛生の取組は前年から後退)

厚生労働省が、2026(令和8)年8月7日付けで令和7(2025)年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況を公表しました(リンク先はpdf。事業所調査はP.3〜14)。
労働災害防止計画の重点施策を策定するための基礎資料を得ることを目的に、毎年行われている調査で、事業所調査と個人調査から構成されます。
常用労働者10人以上の民営事業所約14,000か所を対象とした事業所調査には、8,054事業所が回答しています(有効回答率57.3%)。
今回は事業所調査から、私が注目した動きを整理します。

前年を下回った項目が並んだ

目につくのは、前年調査から数字を落とした項目が少なくないことです。

産業保健の取組を行っている事業所は87.9%(前年89.8%)と1.9ポイントの低下
メンタルヘルス対策に取り組む事業所は63.0%(同63.2%)、うちストレスチェックの実施は64.0%(同65.3%)と、そろって前年割れ
ストレスチェック結果の集団ごとの分析を実施した事業所も74.9%(同75.4%)と小幅な低下
外国人労働者に分かる言語による災害防止教育は46.3%(同60.4%)と、14ポイントを超える落ち込み

一方で、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%(同12.8%)と増えています。
取組が薄まる一方で不調者は増えているという、対照的な二つの動きが同じ年に並んでいました。

背景にある事業活動の好調

では、なぜ取組が広がらなかったのでしょうか。

手がかりは、伸びた項目のほうにあるように思います。
労働安全衛生法に基づく雇入れ時教育を実施している事業所は57.4%(同54.5%)と3ポイント近く増え、契約社員24.9%(同22.5%)、パートタイム労働者35.9%(同33.4%)と、正社員以外への実施も上昇しています。
新たに人を迎え入れる場面が、それだけ多かったということでしょう。
事業活動が引き続き好調であることが、後退の背景の一つとして働いているように思われます
受注も採用も動いている職場では、現場の手はまず日々の業務に向かいます。
産業保健や集団分析のように、後回しにしても当座は回ってしまう取組から薄くなっていったのではないでしょうか。
不調による休業や退職が増えたことも、この推測と矛盾しません。
もっとも、一年分の動きだけで背景を断定はできませんが。

個人調査の結果については、次回のエントリーでご紹介いたします。