障害者雇用納付金、100人以下の企業にも?②(なぜ今か)
前回のエントリーで、納付金制度のしくみと、100人以下の事業主が当分の間その対象外とされていることをご紹介しました。
今回は、なぜ今あらためて適用拡大が議論されているのか、資料に示されたデータから整理します。
「進展した上で」という条件
2022(令和4)年の前回改正時、分科会の意見書は、コロナ禍での経営環境の悪化等を挙げたうえで、
100人以下への適用拡大は「これらの事業主における障害者雇用が進展した上で、実施することが適当である」としていました。
今回の資料は、この条件に照らし、100人未満の事業主の実雇用率が平成20年の1.42%から
令和7年の1.94%へと着実に進展している、と評価しています。
もっとも、規模別ではなお最も低い水準です(1,000人以上は2.69%)。
補正すると・・・
資料はここで、二つの補正を加えています。
一つは端数の影響です。雇用義務数は小数点以下を切り捨てて求めるため、
例えば60人の企業が1人を雇用して義務を果たしていても、実雇用率は1.66%と低く出ます。
この端数を除いて計算し直すと、100人未満の実雇用率は2.55%となり、
1,000人以上(2.70%)に次ぐ水準になります。
もう一つは就労継続支援A型事業所です。
A型事業所を保有する法人を除くと、100人未満の補正後の実雇用率は2.15%に下がり、規模別で最も低くなります。
また、達成企業割合でみると、100人未満は44.7%で、
300〜500人未満(40.3%)や500〜1,000人未満(44.5%)を上回っています。
100人以下は雇用が進んでいない、と一括りにはできないことを、資料自身が示しているようです。
前回の拡大で何が起きたか
資料は、平成20年改正の前後10年で実雇用率の増加率を比べています。
新たに納付金の対象となった100〜300人未満の事業主は、改正前の10年が-8%、改正後の10年が+43%で、変化幅(+51ポイント)は規模別で最大でした。
資料は、納付金の適用が一定の雇用機会の拡大につながったとしています。
加えて、障害者専用求人の新規求人倍率は大都市圏より地方部の方が低い傾向にあり(最高は茨城の1.57、最低は長崎の0.50)、大企業や特例子会社の少ない地域で雇用の場を広げる効果も見込まれています。
同じ期間には法定雇用率の引上げもありましたので、上昇のすべてを納付金の効果とみるのは慎重であるべきでしょう。
ただ、研究会報告書は、対象拡大の前の一定期間から実雇用率の改善が大きかったと指摘しています。
施行を待たず、議論が始まった段階で企業の動きが変わったと読むのが自然なようです。
なお、事務局が示した具体案については、次回のエントリーでご紹介いたします。
出典:労働政策審議会 障害者雇用分科会(第144回)資料1「障害者雇用納付金制度の在り方及び中小企業に対する企業支援の強化について」(2026(令和8)年10月21日)(pdf)


