カスハラ対策の義務化

2026(令和8)年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)を防止するための雇用管理上の措置が事業主の義務となりました。
措置の具体的な内容は、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(pdf。令和8年厚生労働省告示第51号。以下「指針」)に定められています。

カスハラは、セクハラやパワハラとは毛色が異なります。
セクハラやパワハラの行為者は多くの場合自社の従業員で、事業主は懲戒等の措置を講じることができます。
これに対しカスハラの行為者は、顧客や取引先、施設の利用者など社外の人で、事業主の指揮命令も懲戒も及びません。
そのため指針では、事後の対応にセクハラ・パワハラの指針にある「行為者に対する措置」が置かれていません。
代わりに、毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針の明確化と、特に悪質なものへの対処(警察への通報、出入り禁止等)の方針・体制の整備が求められています。
外から来るハラスメントから従業員をどう守るか、という組み立てになっているわけです。

指針は、あらかじめ定める対処の内容として、その場で上司に報告して指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、必要に応じて上司が代わって対応する、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、といった例を挙げています。
自社の従業員を守るという意識のある事業主様であれば、こうした対応はすでに現場で行っておられるのではないでしょうか。
相談窓口についても、パワハラ防止措置は中小企業でも2022(令和4)年4月から義務となっており、指針では他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することも考えられるとされています。
こうした事業主様では法令が求める対応のほとんどが実施済みで、残るのは、方針と対処の内容の文書化・周知や、相談等を理由とする不利益取扱いをしない旨の規定など、明文化の作業が中心になると思われます。

他方、多忙のために顧客対応を担当者個人に任せきりにしてきた事業主様もおられるでしょう。
この場合に必要なのは、規程の整備より先に意識の変革です。
法が求めているのは「労働者を保護する」方針であり、理不尽な要求に従業員を一人で耐えさせておくことは、事業主の措置義務を果たしていないことになります。
要求が続くなら電話を切ってよい、と従業員が判断できるかどうかは、事業主の明確な意思表示にかかっています。

なお、顧客等からの苦情の全てがカスハラに当たるわけではなく、社会通念上許容される範囲の申入れは正当なものとされています。
障害者が合理的配慮を求めることも、カスハラには当たりません。
方針を周知する際は、この線引きも併せて従業員に伝えておく必要があります。

厚生労働省のリーフレット(詳細版)(pdf)では、他のハラスメントと異なる措置が太字で示されており、自社の点検に大変参考になるものと思われます。