障害者雇用納付金、100人以下の企業にも?④(算定方法の見直しと中小企業支援)
前回のエントリーまで、100人以下への適用拡大をめぐる事務局資料を見てきました。
今回で最終回となります。
残る二つの論点、納付金・調整金の算定方法の見直しと、中小企業に対する支援の強化を取り上げます。
「納付金>調整金」の前提が崩れている
障害者の雇用の促進等に関する法律では、納付金の額を、法定雇用数までの雇用に通常必要とされる特別費用の平均額を基準に定めるとしています。
これに対し、調整金は同法第50条(障害者雇用調整金の支給)で、法定雇用数を超えて雇用する場合に追加的に必要とされる特別費用の平均額が基準です。
身体障害者のみが対象だった制度創設時は、費用の中心がスロープやエレベーターなどの設備で、雇用する人数が増えるほど1人当たりの費用は下がりました。
そのため、納付金の額が調整金の額を上回る関係が保たれていたわけです。
ところが近年は、知的障害者・精神障害者の割合が高まり、人数に比例して増える人的サポートの費用の比重が大きくなっています。
資料は、常に「納付金額>調整金額」とはいえなくなり、納付金財政の健全性に課題が生じうると指摘しています。
実際、令和6年度の収支は約90億円の赤字で、令和7年度は約46億円の黒字と、年度ごとの振れが大きくなっています。
見直し案は、納付金・調整金とも、法定雇用数に関わらず1人の雇用に通常必要とされる特別費用(≒現行の納付金額)を基準としつつ、物価・賃金の推移や財政の健全性等を総合的に勘案して定める、というものです。
調整金の額が今後どちらに動くのかは、資料からは読み取れません。
ただ、財政事情を勘案できる建付けになる以上、法定雇用率を上回って調整金を受け取っている100人超の事業主様にとっても、無関係な話ではないでしょう。
相談援助事業のてこ入れ
中小企業への支援の柱は、2024(令和6)年度に始まった障害者雇用相談援助事業です。
雇用のノウハウを持つ認定事業者が、ノウハウの不足する企業を支援し、その成果に応じて助成金を受け取る仕組みですが、資料は次のような課題を挙げています。
・認定事業者 147社(2026(令和8)年7月末時点)で、地理的にも偏在
・認定基準 具体的な支援実績までは問われず、支援の質にばらつき
・助成金 ほとんどが求人の提出時点で支給され、定着を重視する誘因が弱い
実績をみると、2024(令和6)年4月から2026(令和8)年3月までの受給資格認定は442件ですが、雇入れ後6か月以上の雇用継続に対する助成金の支給決定は22件にとどまります。
見直し案では、認定要件に具体的な実績を求めること、助成金の重みを定着時に移すこと、ハローワークが支援の必要な事業主を選んで認定事業者とつなぐことなどが示されています。
今後の見通し
同じ回の参考資料2によると、分科会は月1回程度のペースで議題を順に議論しており、意見書の取りまとめや法案提出の時期はまだ示されていません。
平成20年改正では、2007(平成19)年12月の意見書から1年後に改正法が公布されています。
これに前回ご紹介した準備期間が加わりますので、案のとおり進んだとしても、実際に納付金がかかるのはかなり先になりそうです。
それでも、適用拡大と支援の強化は一組として示されています。
支援が求人の提出止まりで終わるのか、定着まで届くのか、その実効性が、拡大を受け入れられるかどうかを左右するように思います。
出典:労働政策審議会 障害者雇用分科会(第144回)資料1「障害者雇用納付金制度の在り方及び中小企業に対する企業支援の強化について」(2026(令和8)年10月21日)(pdf)


