障害者雇用納付金、100人以下の企業にも?③(事務局案は「80人超・雇用ゼロ企業から」)
前回のエントリーでは、適用拡大が議論されている背景を、資料のデータから整理しました。
今回は、事務局が示した具体案の中身を見ていきます。
意義と影響をどう量るか
資料は、適用拡大の意義として二つを挙げています。
一つは、障害者を多く雇用する事業主とそうでない事業主との負担の公平です。
もう一つは、特に地方部での雇用機会の拡大です。
他方、小規模な事業主には特有の難しさがあることも認めています。
1人分の業務を生み出すには複数の業務を切り出して組み合わせる必要がありますが、マルチタスクを苦手とする障害特性の方も少なくありません。サポート体制を厚く組むことも、求人条件で大企業と競うことも容易ではないでしょう。
そのうえで、十分な体制のないまま受け入れることになる懸念と、最低賃金の引上げ等で厳しい経営をさらに圧迫し、労働者全体の雇用に響く懸念、この両者とのバランスをどう考えるか、と問いを立てています。
まずは80人超100人以下から
具体案として示されたのは、次の三点です。
・既に納付金が適用されている100人超と規模が近く、雇用義務数が2人以上となる80人超100人以下の事業主を、まず対象として検討する
・体制整備のため、十分な準備期間(例えば5年程度)を設ける
・障害者の雇用数がゼロである事業主から適用を始める
準備期間については、平成20年改正の際、200人超は公布から1年半程度、
100人超は6年程度を設けた例が添えられています。
資料の集計区分(80〜100人未満)でみると、対象は約1.4万社です。
この規模の実雇用率(1.92%)が100〜300人未満並み(2.18%)に上がれば、約3,000人分の雇用が生まれると試算されています。
現在の雇用状況のまま現行の納付金制度を当てはめた場合の財政影響は、機械的な試算で50億円程度の収入増です。
仮に雇用義務2人の事業主が1人も雇用していなければ、納付金は月10万円、年120万円です。
関係団体の受け止め
2026(令和8)年4月と5月に分科会で行われた関係団体ヒアリングでは、資料に掲載された3団体がいずれも、適用拡大そのものには賛成していました。
ただし、納付金額自体の減額措置、一定期間の減免、対象規模の段階的な引下げなど、激変緩和を求める意見も重ねて出ています。
今回の案は、規模を80人超に絞り、準備期間を置き、雇用ゼロ企業から始めるという三重の緩和で、これらに応えた形といえるでしょう。
ただし、当日の議事録がまだ公開されていませんので、労使それぞれからどのような意見が出されたのか確認する必要があります。(後日まとめて本ブログに載せるつもりです。)
「80人」の線は動くかもしれない
もっとも、資料の試算は法定雇用率2.5%を前提にしています。
2026(令和8)年7月からの2.7%で計算すると、雇用義務が2人になるのは74.5人以上です。
制度化の段階で線を80人のまま置くのか、雇用義務2人を基準に引き直すのかは、資料からは読み取れません。
いずれにせよ、雇用ゼロの事業主から適用を始めるのであれば、まず1人目を雇用しているかどうかが当面の分かれ目になりそうです。
なお、納付金・調整金の算定方法の見直しと、中小企業への支援の強化については、次回のエントリーでご紹介いたします。
出典:労働政策審議会 障害者雇用分科会(第144回)資料1「障害者雇用納付金制度の在り方及び中小企業に対する企業支援の強化について」(2026(令和8)年10月21日)(pdf)


